Trouble manual

トラブル対応マニュアルの作り方(問い合わせ対応との分け方)

トラブル対応マニュアルは、お客様との間で起きる行き違いや不具合を、「問い合わせ」「不具合・行き違い」「クレーム」の3つに分け、区分ごとに最初の一手・記録する項目・責任者へ上げる条件を決めた手順書です。クレーム対応マニュアルが相手の不満を受けてから動くのに対し、こちらは不満が出る前の段階から扱います。

3つの区分と、区分ごとに決めること
区分例最初の一手責任者へ上げる条件
問い合わせ使い方の質問、納期や請求内容の確認受付内容を記録し、自社で決めた期限内に回答する回答に社内確認が要る/同じ件で2回目の連絡が来た
不具合・行き違い納期遅れ、誤請求、予約の重複、部品不足、配送ミス日時・注文・金額などの事実を確かめ、現状と次の連絡時期を伝える返金・再送・無償対応が絡む/他のお客様にも同じ原因が及ぶ
クレーム対応への不満の表明、強い要求、繰り返しの連絡聞き取りと記録に徹し、その場で約束しない(手順はクレーム対応マニュアル)受付の時点で責任者へ共有する

2026年10月31日更新

問い合わせが、トラブルやクレームに変わる合図

問い合わせ対応マニュアルの役目は、質問に答える手順を決めることだけではありません。普通の問い合わせの中から、放っておくと大きくなる連絡を早めに見分けて、区分を一段上げることも決めておきます。次のどれかが出たら、受付者の判断で区分を上げてよいルールにすると、現場が迷いません。

  • 同じ件で2回目以降の連絡が来た
  • 「前にも伝えたのに」「何度も言っている」という言葉が出た
  • こちらが伝えた回答の期限を過ぎている
  • 金額、返金、解約、損害といった言葉が出た
  • 口コミやSNSへの投稿をほのめかされた
  • 受付者が「自分では答えきれない」と感じた

区分を上げたら、それまでのやり取りを新しい記録へ写し、誰が引き継いだかを残します。区分を上げることは相手を疑うことではなく、判断を現場の一人に背負わせないための手順です。

よくあるトラブル別・最初の一手

トラブルは原因がさまざまですが、最初に確かめる事実と、相手に伝えてよいこと・まだ約束しないことは、型にしておけます。次の表は例です。自社の業務に合わせて行を足し引きして使います。

トラブル別の確認事項と、伝えてよいこと・約束しないこと
トラブル最初に確かめる事実伝えてよいことまだ約束しないこと
納期遅れ注文日、案内した納期、現在の進み具合、遅れの原因が社内のどこか遅れていること、確認中であること、次に連絡する日時新しい納期、遅れに対する値引きや補償
誤請求・金額の違い請求書や見積書の記載、適用した料金、相手が指摘する金額請求内容を照合すること、結果を伝える時期どちらの誤りかの断定、返金額
予約の行き違い・重複予約を受けた経路と日時、控えの記録、当日の枠の状況予約の記録を確認していること、代わりの案を用意する場合はその旨どちらに原因があるかの断定、無償での対応
商品の不具合・部品不足購入日、商品名、型番や注文番号、状態(写真など相手が出せる範囲)状態を確認すること、交換や返品の手続きの案内先交換・返金の可否(規約と在庫の確認後に回答)
配送の誤り・破損送り状番号、配送業者の記録、届いた時の状態配送記録を確認すること、状況の連絡時期配送業者側・自社側のどちらの責任かの断定
説明の食い違い相手が聞いた内容、実際に案内した記録(メール・通話メモ・案内文)案内の記録を確かめること、確かめた後に回答すること担当者の非の認定、例外対応
個人情報の誤送信何を、誰に、いつ送ったか。送り先に何が見えているか事実の確認を進めていること、責任者から連絡すること原因や影響の断定(受付者は伝える前に責任者へ直ちに上げる)

個人情報の誤送信のように影響が広がるものは、受付者が一人で動かず、すぐに責任者へ渡す行にしておきます。届け出や通知が必要になるかどうかは、社内の規程と、専門家や所管窓口の案内で確かめてください。このページでは判断しません。

お客様への連絡文と、トラブル記録のひな型

次のひな型を社内文書へ写し、[ ]を自社の言葉に置き換えます。連絡文で大事なのは、確かめたことと、まだ確かめていないことを分け、守れる期限だけを書くことです。

1. 受付の返信(最初の連絡)

[お名前]様
ご連絡をありがとうございます。[件名や対象]についてのお知らせを受け取りました。
いま、[注文・予約・請求]の記録を確かめています。確認の結果は、[日付・時刻]までに[連絡方法]でお知らせします。
お急ぎの点がありましたら、このメールへの返信でお知らせください。
[会社名・部署名]

2. 経過の連絡(調べるのに時間がかかるとき)

[お名前]様
[日付]にお知らせした件について、経過をお伝えします。
確かめられたこと:[ ]
まだ確かめていること:[ ]
次にお知らせする日時:[ ]
お待たせしており、申し訳ありません。
[会社名・部署名]

3. 社内確認のあとの回答

[お名前]様
[件名]について、確認が終わりましたので、結果をお知らせします。
確認の結果:[事実だけを書く]
今後の対応:[責任者が承認した内容だけを書く]
ご不明な点は[連絡先]へお知らせください。
[会社名・部署名・承認した責任者の役職]

返金や補償を書くのは、責任者が承認したあとの3つ目だけにします。1つ目と2つ目に金額や補償を入れないと決めておくだけで、事実確認前の約束を防げます。お詫びの言葉は、相手を待たせていることや不便をかけていることへのお詫びと、責任を認める表現とを分けて考えます。判断に迷う文面は、送る前に責任者が確認します。

4. トラブル記録(社内用)

クレーム対応マニュアルの受付記録は、お客様からの連絡を受けた場面を想定しています。トラブルは社内の担当者が先に気づく場合もあるため、次の項目を足した記録にします。

【トラブル記録】
記録ID:[ ] 記録日:[ ] 記録者:[ ]
区分:[問い合わせ/不具合・行き違い/クレーム] 上げた日と理由:[ ]
発覚の経路:[お客様の連絡/社内で発見/取引先からの連絡]
対象:[注文番号・予約・請求書・商品など]
影響を受けた人と件数:[確認できた範囲] 他にも及ぶ可能性:[有/無/未確認]
確認できた事実:[ ] 未確認事項:[ ]
暫定の対応と実施日:[ ]
原因:[確定したこと]と[推測]を分けて書く
お客様へ伝えた内容と日時:[ ]
再発を防ぐ手立て:[ ] 担当者と期限:[ ]
完了の確認者と日付:[ ]

同じ原因が他のお客様に及んでいないか確かめる

1件のトラブルは、同じ原因の最初の1件であることがあります。誤請求なら同じ料金設定の他の請求、予約の重複なら同じ時間帯の他の予約、部品不足なら同じロットの他の出荷、というように、原因から逆にたどって対象を洗い出します。

  • 原因として考えられる作業や設定を書き出した
  • 同じ作業・設定を通った他の注文、予約、請求を抽出した
  • 確認した範囲(期間・件数)を記録に残した
  • 他のお客様への連絡が要るかを、責任者が判断した
  • 連絡する場合の文面と順番を責任者が承認した

洗い出しは、お客様への回答を待たせる理由にはしません。「他の方への影響も確認している」ことを経過の連絡に書き、回答の日時は別に守ります。

期限・担当・見直しを決めて、運用に載せる

  • 一次連絡の期限(例:受付から[ ]営業日以内)を、守れる長さで決める
  • 責任者が不在のときの代理担当を決める
  • 区分ごとに、記録の保存先と閲覧できる人を決める
  • 月に一度、区分別・原因別に件数を数え、多いものから手順か業務を直す
  • 手順を使って迷った点を集め、版を変えて更新日を残す

期限の長さに決まった正解はありません。業種、受付の人数、営業時間によって守れる長さが違うため、自社が確実に守れる期限を決め、守れなかったときに誰へ伝えるかも一緒に決めます。版の管理や展開前の確認は、クレーム対応マニュアルの「版・管理責任者・見直し日」と「現場へ展開するときのチェックリスト」がそのまま使えます。

トラブル対応マニュアルのよくある質問

Q. トラブル対応マニュアルとクレーム対応マニュアルは、分けて作るべきですか?
手順書は1冊でも構いませんが、入口の区分は分けておくと使いやすくなります。このページの3区分で受け、クレームに当たるものだけクレーム対応マニュアルの手順へ進める形にすると、現場は「まずどれか」だけ決めればよくなります。

Q. 問い合わせ対応マニュアルには何を入れればよいですか?
受付窓口ごとの受け方、回答の期限、よくある質問への答え、社内確認が要る内容の判断、記録の項目、そして上の「区分を上げる合図」を入れます。質問に答える手順だけでなく、答えきれないときの渡し先まで決めておくのが要点です。

Q. システム障害のようなトラブルの復旧手順も、このマニュアルに入れますか?
このページが扱うのは、お客様との間で起きる行き違いや不具合の受け方です。サーバーや業務システムの復旧手順は、技術の担当者が別に作る文書として分け、お客様への連絡の部分だけをこのマニュアルの連絡文に合わせるのが現実的です。

Q. 事実確認の前に、お詫びを書いてよいですか?
待たせていること、不便をかけていることへのお詫びは書いても、責任の所在や原因を認める表現は確認が終わるまで避けます。どちらか迷う文面は、送る前に責任者が見る決まりにします。

Q. 少人数の店や会社でも必要ですか?
少人数ほど、1人が受付も確認も回答も担うため、期限と記録が抜けやすくなります。区分表と連絡文のひな型だけでも先に用意すると、抜けを減らせます。

Q. 法律上の判断が要りそうなときはどうしますか?
損害の賠償、契約や規約の解釈、個人情報の扱いなどが絡むときは、当サイトでは判断しません。記録を残したうえで、弁護士など専門家へ相談してください。

対応範囲について

当サイトは、クレームの一次対応・状況整理・返信文案・対応履歴整理など、社内対応を支える情報提供とサポート案内を目的としています。法的判断、交渉、損害賠償請求、示談に関する交渉などが必要な場合は、弁護士など専門家への相談をおすすめします。

マニュアル化の前に、現状の窓口と困りごとをまとめる

どの窓口で、どの種類のトラブルが、月にどのくらい起きているかを書き出すと、区分表に入れる行と、先に決める期限が見えてきます。

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